MOTO設計工房 住宅コラム

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宮崎の風土と家

宮崎の風土と家

宮崎県の気候は、一般に南国といわれ温暖な地域です。

戦後、「太陽と緑の国」、「三六五日花のある宮崎」などのキャッチフレーズを掲げ、
観光県として全国に売り出し、南国ブームを起してきましたが、
最近は手軽に沖縄やハワイなど海外旅行などに行く人が増えてきて、
宮崎の観光は下火になりかけています。

しかし、温暖な風土は、
人間味豊かな県民性とあいまって、多くの人々をひきつけているようで、現在でも老若男女問わず移住者も多いようです。

地域での気候風土の違い

同じ宮崎県内といっても、
実はかなり地域的な差があり、一概に同じ気候風土ではありません。
宮崎市では桜が満開なのに、五ヶ瀬町などでは遅い雪に見舞われることもしばしば。

日本最南端のスキー場が宮崎にある事を知らない人も多いと思います。

そのため、
テレビやラジオの天気予報でも、
春から秋にかけては、県北部と県南部に区分し、
晩秋から冬にかけては、県東部と県西部とに分けて放送しています。

とくに冬の気候は、東部海岸地方と、西部山岳地方とでは、
表日本と裏日本に似て、かなりの違いがあります。

度々、「東部は晴れ、 西部は曇り一時雪」というような予報が聞かれます。
西部山岳地方は深い山々が連なり、かなりの積雪もあり
南国宮崎とは思えないくらい寒気の厳しい冬が訪れるのです。

この西部山岳地帯を除いては、
冬も温暖で、宮崎市はもちろん、霧島盆地で霜の深い都城市でさえ、
雪の降ることはほとんどありません。

稀に風に混って雪が飛んでくるくらいで、
積るほど降ることはほとんどありません。

九州の他県と比べると、本当に温暖で住みやすい気候風土なのです。

隣の鹿児島市でも、年間数センチの雪の積ることがありますが、
宮崎市の気温は、月平均でみると1月が6.7度、8月が26.9度、
年平均でも16.8度と、

一年を通して凌ぎやすい温度となっています。

湿気対策と風通し

しかし 湿気が多いので、温度以上に暑さを感じさせます。
このため風通しのよい家を考えなければなりません。

風通しといえば、風向きが問題になります。
特に夏の風向きをよく知る必要があるのです。

宮崎市では、西寄りの風が夏最も多く吹くので、
東西に窓を設けて、室内の風通しをよくすると、
涼しい夏を過すことができます、

地域の特性にあった設計構造は、省エネ時代にはさらに重要になってきます。

東京などは、南風を通せばよいと言われていますが、
地域地域で地形や風向き、湿度や気温など、

かなりの違いがありますので、
そういった地域特性や防災を考えた
家作りをする事がなにより大切だと思います。

石場建てでシロアリ対策

宮崎は湿気も多いので、
床下や天井も風通しをよくすることによって、
白アリの害や腐朽を防ぐことができます。

布基礎ではなく、石場の上に柱を建てる『石場建て構造』は、
床下が素通しになっているので、
床下の柱などの点検もしやすく風通しもよく
シロアリ被害を未然に防ぎやすくなります。

上記の事からも、
伝統工法の石場建てにする事は、
宮崎の気候風土に最も適した構造だといえます。
宮崎の風土と家03

また、一年を通して住みやすい宮崎ですが、
唯一の災害として恐れられているものに、台風があります。

実は、宮崎は「台風銀座」という
ありがたくない名までつけられた台風常襲県なのです。

特に戦後10年間は、毎年大型台風が何回か来襲し、
被害も甚大で、その恐ろしさを身にしみて感じてきています。

ところが、
ここ二10数年大きな台風が、宮崎県を避けて通り過ぎているので、
台風の恐ろしさを忘れたのか、恐ろしさを知らない人が増えてきたためか、
耐風構法を無視したような住宅が建つようになっています。

これは、ちょっと危険な状態だと思っています。

宮崎の民家の特徴と暴風対策の屋根と壁

直屋(すごや)が主で、複雑な屋根型はない

宮崎県は昔から台風の通過地帯で、雨風の強いため、
単純な屋根のいわゆる直屋(すごや)がほとんどで、
古い草ぶき民家は、寄棟屋根の直屋の屋根となっています。

主屋ばかりでなく、付属屋(倉庫、馬屋)なども
みな寄棟の直屋でした。

後に瓦ぶきに改造されるようになって、
入母屋が多くなり、

新しく大正年代ごろになると切妻屋根も用いられましたが、
直屋には変りはありません。

直屋01

この直屋以外では、
旧薩摩藩領の西諸県地方に、
(C)の別棟型(二棟造)が今でも見られますが、
これは分類では直屋と区別していますが、
直屋が二棟つながれているものとみることもできます。

このように屋根型も平面も、
風を孕む(はらむ)むような不利な形は全くみられず、
雨仕舞の悪いものは造られてきませんでした。

これは雨や風の影響を身にしみて感じていたからなのです。

土壁 より板壁が多い

もともと民家の壁は土塗り壁で、
竹小舞に土を塗ったもので、

板が壁に用いられるようになったのは、
幕末に近いころか、明治になってからのことなのですが、

宮崎県は山国であって、林産業が比較的早く発達したので、
木材が用いられたのも早かったと思われます。

確かな記録による証明はできませんが、
雨 風の多いため、土壁では困るので、
板壁が必要であったことがその原因だと考えられます。

土塗壁は宮崎のように強い雨には崩れやすいし、
高温多湿な地方であるため、
見ばは悪いが板壁が最も適しています。

まとめ

●宮崎県内でも地域によって気候風土が異なりる。
●宮崎の気候風土にあった湿気対策と風通しが必要。
●石場建てはシロアリ被害を防ぎやすい。
●耐風対策の為に複雑でない屋根構造をする必要がある。

宮崎の風土と家02

このように、
現在でも気候風土や、耐風対策などで
昔からの知恵を継承しながらも

現代風な便利さを組み込んだ家作りをする事で
快適かつ、安全で長持ちする家作りをする事ができるのです。

それでは、また次回のコラムをお楽しみに~!
ではでは!

2014年12月5日 1:15 PM  カテゴリ: 風土

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